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Hawker Siddeley (Blackburn) Buccaneer 佐貫亦男氏文 [雑記録]

東大、日大で教授をされていた佐貫亦男さん(1908年~1997年)
【日本楽器製造(現ヤマハ)でプロペラの設計をされており、大戦中は技術導入のためにドイツに出張滞在されており、ベルリンで空襲を経験されています。
航空、技術評論など著書多数】の一機づつ、紹介評論した著作の中にバッカニアについての文書があり、とてもわくわくしてしまうものなので、ここに紹介します



ブラックバーン・バッカニア艦上攻撃機 「海賊の頭巾」

 ブラックバーン(後にホーカー・シドレーとなった)・バッカニア艦上攻撃機のなは、昔カリブ海などを荒らしまわった海賊のことである。
そのせいか、この機体の線にはいたるところ無頼という感じが流れているような気がしてならない。
 まず、主翼が後退翼だけれどもちょっと三日月型で、翼端が思いきりよく切り落としてある。
そもそも、この機体はレーダーの捜索を逃れて、低空で敵艦線に高亜音速(マッハ0.95)で接近することを目的とするから、低空の乱れた空気にもまれても披露しないことが先決で、荒い飛行は覚悟の前である。
そして帰投着艦のときは大きい揚力が必要になるから、そのときはエンジンから分流した圧縮空気をフラップ、補助翼、尾翼に吹きかけ、高揚力とともに操縦性を増大する。
 つぎに目につくのは面積法則に従った胴体で、二名の乗員カノピーと両側の双発ジェットエンジンナセルの間が主翼位置で溝となり、主翼の後方ではコカコーラのびんのようにふくらんでいる。
そして尾部はペンギンのしっぽのように尖って、なにか怪しげな装置を内蔵しているらしい。
 水平尾翼は普通の形だが、垂直尾翼は極めて特徴がある。
いわゆるT型水平尾翼であるのはよいとして、垂直尾翼がその上まで伸びて丸みがつき、なにか片目に黒バンドをした海賊の頭領の斜めにかぶった頭巾のようなぐれた不気味さがある。
長い尾びれが眼帯ということになるだろう。
 このなぐりこみ機の構想は1950年代の初めごろ発送し、1955年にブラックバーン社の提案が承認されて試作機20機の注文があったことは、イギリス海軍のなみなみならぬ熱の象徴であった。
機名もアタッカーでなしにストライカーとなっているから、完全に強行突破の突撃思想である。
 試作第1号機の初飛行は1958年4月30日であったが、これは空気力学的外形試験器である、以後の試作18機(ほかに一機は静的試験器)を使って十分なテストが始まった。
第2号機は主翼板厚を増して空気力学およびフラッター試験用、第3号機も同様だが、エンジンテスト兼用、第4号機は主翼折りたたみ、制止フックなどつけて空母上の試験用、第6号機は油圧爆弾倉、主翼釣下点(ストロングポイントという)などをつけて武器試験用、第6号機は電気システムの試験用、第7,8,9号機は全電子および航法と火器管制装置をつけて最終装備試験用、第10、11,12,13,14号機は第9号機と同じ装備と同じ装備で空軍省の試験を受けた。
残り15,16,17,18,19号機は実験飛行体の実用試験にあてた。
 これらのテストを眺めると、このような荒い任務軒対には実に入念な試験をするものだとわかる。
まったく海賊のしごき的な過程であるが、これを抜かしたら、たちまち空中分解したり、突入しても爆弾が落ちなかったりするであろう。
それでも、バッカニアの疲労寿命は1000時間あるいは着艦1000回といわれ、民間輸送機の数万時間にくらべて恐ろしく短命であるのは、もちろん激しい使い方のためである。
 海賊が懐中に忍ばせている武器は、核兵器または通常爆弾を胴体内爆弾倉へ、主翼下には4個まで450キログラム爆弾、空対地ミサイル、あるいは空対空ミサイルつるす。
しかも、隠密に全天候航行ができ、目標の約500キロメートル手前までは高度6000メートルで巡航し、そこから海面すれすれに降下して目標160キロメートルまで約740km/時(マッハ0.6)で接近し、それから960~104x10km/時(マッハ0.79~0.85)で突入して攻撃をかける。
なお、海面最大速度はマッハ0.9まで可能である。
ただし、この性能はブリストル・シドレーのジャイロンを装備した1型で、それをはるかに強力なターボファンのロールスロイスのスペイに換えた2型は、1963年5月17日に初飛行し、性能は大幅に向上した。
これは、1965年以降イギリス空母に配備された。
 ただ、イギリス海軍にとっては無念にも1969年に空母全廃と方針が決まった。
そこへ持ってきてイギリス空軍は新型攻撃機の予算が切られたので、バッカニアをもらい受ける話が成立した。
この結果、海軍の90機あまりのバッカニアは改装して陸上勤務となり、なお26機の陸上型が生産された。
イギリス空軍にとってみても、それまで保有していた戦略爆撃機が旧式化し、かつ最近の戦法が低空進攻攻撃となってきたので、戦略攻撃の主力として考えている。
海軍の先見が10年たって実ったかたちである。
やはり、思いついたとき開発は進めておくものだ。
 バッカニアにとっては、海賊が陸に上がって馬賊になったようなものだが、気をとり直して頭巾にちょっと手をかけ、さあ、気落ちせずにゆこうぜといっている姿である。

講談社刊 佐貫亦男著 「続・飛べヒコーキ」より
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